吸血鬼に憧れる
「でね、月の明かりも入らないくらい、真っ暗な部屋よ。いい、真っ暗。肌と肌が触れ合い続けるくらい密着した相手しか見えないぐらい、真っ暗」
「なんかエロい」
「そう? で、血を吸う吸血鬼と、吸われる人間ね。夜通し、じっくり、ことは進むの。きっと、痛みと快楽が同等にせめぎ合うのよ」
「うそ臭い」
「いいの、想像なんだから。それに絶対、気持ちいいに決まってるわ」
実際に吸血鬼に出逢ったわけでもないだろうに、彼女は断言する。はいはいと頷いておいた。想像なんだ、どういう形でもいい。
「それでくたくたになって、朝を迎えるの。ね。夜の情事を終えたのと、同じくらいくたくたで」
「もうダメだ」と僕も笑った。「頭の中が完璧にエロくなってきた」
「もう、バカ」
と四度目の口癖だったけど、今のは言い方が微妙に違ったからノーカウントにしておこう。
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