あの白に届くまで


二人で会うのは随分と久しぶり。


こないだ雄大先輩に呼び出された喫茶店に、今度はあたしが拓巳を呼び出していた。


…でも。


「特に何かあった、ってわけじゃないんだけど…」

「…」

「…」

「…雄大先輩に、聞いたわけね」


拓巳はふうとため息をついて、そう苦笑した。


1を言えば10を分かってくれる。
そんな感じの拓巳は相変わらず、藤島メンバーの中で一番いい相談相手だと思う。



「…うん」


あたしは軽く俯いて、最近初めてネイルを塗った指を机の上でちょっと弾かせた。

そしてまた顔を上げた。


拓巳はいつのまにか眼鏡を掛けるようになっていた。

…気付かなかったな。


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