あの白に届くまで
「そうかもしんない」
「…」
「愛してるから、時々ひどく憎みたくなる」
拓巳はメロンソーダに再び口をつけてから、「なんてね」と小さく笑った。
少し自嘲気味の笑みだった。
拓巳が目を閉じる。
眼鏡のレンズ越しに長いまつげがちょっと揺れた。
「俺もね、きっと大地と似た気持ちなんだよ」
――愛してるから、
時々ひどく憎みたくなる。
あたしはその言葉をもう一度、自分の胸の中で繰り返した。
不思議と…すっと胸に入ってきた。
「俺たちは日向を好きだったし、日向にとっても俺たちはかけがえのない存在だと思ってたんだ」
拓巳と目が合った。
あたしは無言のまま、小さく頷いた。
伝えたいことがある。
…それでも今は、拓巳の言葉を受け止めたい。