あの白に届くまで
あの頃からいつだって拓巳は、あたしの話を受け止めてくれたから。
「あいつが足を失っても、俺たちは支えられると思ってた。…それにあいつだって、俺たちと一緒に…」
一緒に。
一緒に、居てくれるって。
笑っていてくれるって。
―――無意識にそう、信じていた。
そう。
あたしだって本当はきっと…そうだった。
目を閉じて一呼吸する。
心の中で反芻する。
ちょっとばかり涙が出そうになったときに、拓巳が「でも」と続けた。
「でも自惚れてた。日向を俺たちが助けることなんて出来ないし、出来るわけがなかった。そのことに気付くのが少し遅かったな」
拓巳は落ち着いていた。
当たり前のことをさらっと口にするかのように、言った。
「あいつの人生は、あいつ自身の足でしか走ることが出来ないんだ…ってこと」