あの白に届くまで
夜明―if you could hear
少し早く目が覚めた。
まだ皆眠っているらしく、家の中はしんとしている。
そりゃそうだ。
――時計に目を遣ると6時。
太陽さえ昇っていない。
暗がりの部屋の中、ジャージに着替えた。
寝坊体質な俺にしては珍しくぱっちりと目が覚めている。
…全然眠くない。
「…よしっ」
そっ…とドアを閉めて、家の外に出る。
街がまだ眠っているけれど。
空は少しずつ明るくなろうとしている色だった。
――最近走ってないな。
ふと、そう思った。
引退してから全然走ってないな、と。