あの白に届くまで
早朝独特の冷たい空気も全然気にならない。
気がつけばゆっくりと、体が走り出していた。
行き先なんて考えていない。
まるで何かに導かれるように。
「…」
走りながら静かに目を閉じる。
吸っては、吐く
呼吸のリズム。
少しずつ上昇していく体温。
体の内側から何かが解き放たれる。
軽やかに動く足は、風と静かに調和する。
…すべてが久しぶりの感覚だった。
走りながら考えた。
―――なんで俺は、走るのを辞めたんだろう?
いや。正確に言えば辞めたわけじゃない。
なんでしばらく走ってなかったんだろう。
…受験で忙しかったから?