あの白に届くまで


とにかくもう時間がないんだ。

今しか出来ないことがある。



小さく呟くと、兄貴も「そうだな」と頷いた。

「親父が送ってきたチケットだったら明日の夜には空港だからな」

「そうなんだよ」


急いで残りのコーンフレークをかきこむ。
スプーンと皿を軽く水洗いして流し台に置くと、螺旋階段を駆け上がった。


つくづく、ジャージ姿の俺にはふさわしくないぐらいにピカピカでゴージャスな螺旋階段。



「ダイチ」


ゲストルームに入ろうとした時、下から名前を呼ばれて階段のところまで戻った。

手すりに手を掛けて下を見る。


ソニアが飛び跳ねていた。



「今日はソニア、カズヤと遊ぶ。だから行かナイ」


多分気を利かせた兄貴がうまくソニアを誘ってくれたんだろうな。


別にいいのに。と思いつつも心の中で感謝しておいた。


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