あの白に届くまで
―――俺はどうやったらあなたに、近づけますか?
『…先輩!』
グラウンドから離れてスタンドへと戻っていく先輩の姿を追いかけてそう叫んだ。
その肩が微かに揺れ、立ち止まった。
『どうした、大地』
振り向いて微笑んだ先輩があまりにいつもと変わらなくて。
泣きそうになった。
…泣いちゃダメだ。
泣いちゃダメだ。
泣くな、俺。
深呼吸をしようとしたけどうまく出来なかった。
呼吸がこんなにも難しいと思ったことはない。
『おつかれ…さまです』
やっと喉から出てきた言葉がそれだった。
自分のユニフォームの裾を思わずぎゅっと握りしめる。
…今までこんなに、胸が火傷しそうなほどに熱くなったことはなかった。
『……っ』
『…大地』
そっと顔を上げると、日向先輩は静かに笑っていて。
いつになく優しい表情で…俺の肩をポンと叩いた。
『二位、おめでとう。さすがだな』