あの白に届くまで
ドライバーに料金とチップを払ってタクシーを降りると、校舎に歩み寄った。
建てられたばかりの真っ白な美しいキャンパス。
縦にも横にも、とにかくとても奥行きがあって広い。
中にはまばらに学生が見えるけど、正門には鍵が掛けられていて外部の人間は入れないみたいだった。
なんの日か忘れたけど…とりあえず今日は休日だから無理もない。
校舎から少しだけ離れたところには寮があった。
そして反対側には広いグラウンドがあった。
「…あ」
どうにかして入れないかな。
そう考えながらグラウンドに目を遣ると。
―――緑色のフェンスが破けている部分があることに気付いた。
頑張れば人1人通れそうな穴が空いている。
…自慢じゃないけど、体は華奢な方だ。
俺は思わず辺りを見回した。
泥棒たちがTVの中でよくやるありきたりな仕草だけど、本当に思わずやってしまう仕草だ。