あの白に届くまで


英語で質問するなんて、アメリカに来た初日とは想像もつかない勇気が出ていた。
今までは全部ソニアがやってくれていたから。


俺の質問にオジサンの赤ら顔がすっかり収まり、彼はれっきとした白人だったことが発覚した。


「ウェル…ジャパニーズ?ジャストアモーメント(えー…日本人だって?ちょっと待ちなさい)」


オジサンはグラウンドから離れて、大学の校舎に入っていった。

そして数分後に戻ってきた。
手に灰色のファイルを持っている。



なんか、
心臓がドキドキしてきた。
…久しぶりに。


手に汗握る感覚を覚える。


今まで何度も裏切られてきたけど。
…それでも何度だって、信じてしまう。




「ネーム?」


ファイルを捲りながらオジサンに聞かれて、俺は軽く深呼吸してから答えた。


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