あの白に届くまで


全身に衝撃が走る。


「…ってぇ…」


頭を抑えながらそう呟くと、一度だけ欠伸をした。

まだ完全には開かない目で辺りをゆっくりと見回す。



ここはどこだっけ。
ゆっくりと噛みしめるように、思い出す。





――何かに悩んでるとき、何かに迷ってるとき。
時々、現実と過去と夢の区別が難しくなることに気がついた。





だけど大丈夫。
俺が見てきたもの、今見ているものは全部現実だ。

根拠のない自信が何故か心にあった。




ここは…


―――カリフォルニア南部郊外にある、某大学の近くのモーテル。

格安のホテルみたいなものだった。


帰りがずいぶん遅くなってしまった俺に、赤ら顔のオジサン(実際は白人)が「安く泊まれるところがある」と案内してくれた。



携帯電話を見ると、
兄貴からの着信が何件かあった。

一応連絡はしたもののやっぱり心配しているみたいだった。


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