あの白に届くまで


リダイヤルを押して、電話を掛ける。



「…あ、もしもし」

「大地?大丈夫なのか?ソニアやおばさんがかなり心配してんぞ」

「…兄貴は心配してないのかよ」

「してるしてる」

「今…9時でしょ。昼前には電車乗ってるようにするから。夕方には合流できる」


また詳しいことはあとで連絡すんね。
そう付け加えて、電話を早く切った。

外国での通話料はばかにならない。



携帯をカバンにしまうと服を着替えた。
歯を磨いて顔を洗って、朝ご飯がわりに買っておいたパンをかじる。

でもそのパンはやたらと甘くて、思わず顔をしかめた。



忘れ物がないかを確認すると、部屋の鍵を受け付けに返した。


「サンキュー」

「ハブアナイスデイ(良い旅をね)」


笑顔で送り出してくれた金髪のお姉さんに手を振った。



――良い旅、かぁ。


なんて心の中でため息をつきながら。


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