あの白に届くまで
まだどこか夢うつつで、寝ぼけている俺の頭をコツンと小突くような。
小さいけれど確かな、衝撃だった。
足元を見ると真っ赤なリンゴが2つ転がっていた。
「リンゴ…?」
かがんでそれを拾い上げると、また新たに2、3個こっちに転がってきた。
…なんじゃこりゃ!
リンゴをかき集めるように拾いながら、転がってきた方向に目を遣ると。
――色白の、でも日本人顔をしたきれいなお姉さんが立っていた。
柚先輩にどこか雰囲気が似ているし…年齢も似ている。
「ソーリー」
その人は細くきれいな声でそう言うと、困り顔でリンゴを拾い始めた。
なんだか柚先輩に似ているところが他人事とは思えなくて、手伝わずにはいられない。