あの白に届くまで
10個近くあったリンゴを全部集めて、スーパーの袋に入れ直すと、お姉さんはそこで初めて俺の顔を見た。
「…あら」
近くで見れば見るほどきれいな顔だった。
思わずどきっとする俺をよそに、お姉さんは日本人に会えた安心からか笑顔になった。
「ありがとう、助かりました。…日本の人に久々に会ったなぁ」
色白な肌に映える、まっすぐな黒髪。
焦げ茶色の瞳。
ハーフではないだろうけれど、本当に美人だな。と思った。
「いえ。リンゴたくさん持ってるんですね」
「今日は大学が休みだからアップルパイを作ろうと思って。そしたらうっかりつまずいて、全部転がしちゃった」
ふふ、と軽く舌を出して彼女は笑った。
"大学"という言葉に反応して、聞いてみた。
もしかしたら柚先輩と同い年なのかな?
「大学生なんですか?」
「そう。今20歳」
本当に同い年だったんだな。
そう感心してしまった。
着ている水色のワンピースとか、雰囲気も本当によく似ている。