あの白に届くまで
もしかして、と思って聞いてみた。
「大学はもしかしてあのC大学ですか?」
俺が昨日侵入した大学かな。ここから近いし。
だいぶ自信があったけれど、カナさんは「違うのよ」と首を振った。
彼女が挙げた大学名は知らない名前だった。
小さくてマイナーだけどいい学校らしい。
数分もたたないうちに、リンゴのいい匂いが広がった。
「あ…リンゴ」
「そう。さっきわたしが転がして、大地くんに拾ってもらったリンゴを使ったの」
カナさんは小さく笑って、マグカップにお茶を注いだ。
湯気がふわっと立ち上がる。
「熱いから気をつけてね。どうぞ」
「いただきます」
熱々のマグカップをそっと手にとって、軽く冷ましてから口をつける。
最初は熱すぎて味がわからなかったけど、すごく美味しいことに気付いた。
「美味しい!」
「ホント?ありがとう」