あの白に届くまで


カナさんはにこっと笑った。
笑顔がめちゃくちゃ可愛い。

アップルティーを冷ましながら少しずつ飲んでいくと、心の中からじんわりと暖まっていくような気がした。



「このあたりは郊外だから、あまり日本人がいないの。珍しいわね。大地くんは観光?」


そう聞かれて、俺はカップを置きながら「まぁ…そんなところですかね」と答えた。

カナさんは目を丸くした。


「何もないでしょう。この辺」

「ここに来ること自体に意味があるようなものなので」


そう小さく笑った俺に、彼女は頬杖をついて興味深そうな目を向けた。

細く白い左手の薬指には、シルバーの指輪が光っている。


「自分探しの旅ってやつ?素敵ね」

「平たく言えばそうですね」

「学校は?今高校生でしょ?」

「受験生ですけど一週間休学です」



一週間っていったら、インフルエンザで寝込むのと変わらないぐらいじゃない。
カナさんがそう笑ったから、つられて笑った。


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