あの白に届くまで
そんな感じで、学校のことや家族のこと…いろんな他愛ない話を続けた。
しばらくしてカップの中のアップルティーがだいぶ減ってきた頃、カナさんは軽く目を伏せながら言った。
「いいね。大地くんみたいな人と話してると、元気もらえるよ」
「いや。俺はそんな…全然」
「でもすごく行動力があるじゃない」
それは。
そう言いかけた言葉を一度飲み込んだ。
…人捜しをしていることを、カナさんに言うつもりはなかった。
でもまぁ、これぐらいは言ってもいいかもしれない。
そう改めて考え直して、口を開いた。
「憧れてた人がいたんです。すごく行動力があって…優しくて、強くて。先輩なんですけど」
カナさんは「そうなんだ」と呟くように言った。
―――どこか遠い目をしていた。
少しの間、何も考えずにアップルティーの香りの余韻を楽しんでいた。
カナさんも何も言わなかった。
それでも、
「大地くん」
ふと名前を呼ばれて、顔を上げた。