あの白に届くまで






――――「高校の時にね、好きな人がいたの」



カナさんは小さなクッキーを出してくれた。

お茶と一緒に出すつもりが、すっかり忘れちゃった。
そう小さく笑いながら。



それでも俺はクッキーよりも、カナさんの話に釘付けになった。



「その人とは…」

「なんにもならなかった。2年の時だけクラスが一緒になれたんだけどね、所詮はただのクラスメート。…先生に頼まれたプリントを渡すときぐらいしか話さない。そんな感じだったな」



彼女の細い指に光る指輪が、気になった。
それにさり気なく目を遣ると、すぐに気付かれてしまった。



「あ、これ?」

「…すみません。思わず気になって」

「最近出来たの。優しい優しい彼氏。アメリカ人だけどね」


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