あの白に届くまで
はつこい。
初恋。
とてもきれいな言葉だ、と思った。
俺はゆっくりと「それで…」と口を開いた。
「それで、その人は今…?」
カナさんはクッキーの入っていた缶を手に取ると、椅子から立ち上がって台所の棚に歩み寄った。
「高3の時には既に行方がわからなくなっちゃったの。わたしもクラスが変わっちゃったし、詳しいことは耳にしなかったんだけど。だから驚いたわ」
パタン。
クッキーの缶を棚にしまって小さな扉を閉めると、カナさんが振り向いた。
「アメリカで再会した時にはね。すごく驚いた」
「……え…」
――…一瞬、うまく声が出せなかった。
瞬きさえも忘れて、目の前のカナさんを見つめた。
俺のそんな様子にも気付かずに、彼女は「ごめんね」と小さく笑った。
「長々とこんな話しちゃって。その人ね、本当に大地くんに似てるの。だからつい」