あの白に届くまで
タイムオーバー。
これもきっと運命だったんだろうな。
そう思えた。
――――カナさんの家を出発する時。
向かい通りでタクシーを拾うまで見送ってくれた彼女は、もう既に何かを悟っていたようで。
最後にもう一度「大地くん」と口を開いた。
「その人がアメリカに来た理由はね、"弱い自分を変えるため"。って言ってたわ」
意外な言葉に目を見開いた俺に、カナさんは小さく微笑んでみせた。
「自分が背負った不幸で、周りを憎んでしまう。羨ましく思ってしまう。
すごく愛してるはずなのに、自分の弱さで憎んでしまう……そうしてしまう自分がすごく嫌だったんだ、って。
――だから、大切な人たちを本当に大切にできるように自分が変わる。そのために日本を離れたんだ。
そうわたしに教えてくれたの。」
俺は静かに、頷いた。
なんだか胸が…いっぱいいっぱいだった。
その言葉を理解するにはまだ少し時間が掛かりそうだ、と思った。
「ありがとうございます」
「なんだか今日初めて会ったとは思えないわ。本当に」
カナさんは悪戯っぽい目を上げて、小さく笑いながら言った。
「わたしたち、以前にどこかで会ってたりしてね」