あの白に届くまで



――あぁ。


思わず目を閉じた。
きつく閉じて、深呼吸した。


俺もいつか…誰かに、ここまで愛される日が来たりするのかな。
そんなことを思った。

日向先輩を想う柚先輩の心があまりに綺麗で、透明で、泣けるんだ。






―――――――

―――――

―――





「サンキュー」

「ユアウェルカム」


タクシーを降りて、駅に向かった。
空港までの電車を乗り継いでいかないといけない。

切符を買おうとカバンを開けたとき、中身がぐちゃぐちゃだったせいで財布がなかなか取れなかった。

闇雲に手探りをすると、一通の封筒に入れていた数枚の便箋がばらばらと落ちた。


怪訝そうな顔をする人たちに「すみません」と日本語で謝りながら、風に飛ばされる前に便箋を拾う。



存在を忘れかけてた。
日記みたいに書いていた、長い長い手紙。
なんか急に気恥ずかしくなった。


< 162 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop