あの白に届くまで
それでもさすが藤島陸上部。
会って数分もすると、仲良く話せるようになった。
どの先輩も話しやすくて、本当にいい人だ。
「それは余計なお世話だろ」
プツッ。
既に十曲以上を一人で歌い続けている雄大先輩が入れた、ケツメイシの曲を中止すると。
真琴先輩が俺の隣に腰掛けた。
「あー、ひどー!!何すんだよっ、真琴」
「お前の音痴ソングにはもう耳が腐る」
「なんだとぉー!」
「しっしっ」
雄大先輩を適当にあしらって、
真琴先輩は煙草に火をつけた。
ゆっくりと立ちのぼる煙。
それを見ていると、少しだけ心が落ち着いた。
「…大地」
名前を呼ばれて、先輩を振り向く。
その澄んだ目がまっすぐとこっちを見ていた。
「どうしたんだよ、急に。久しぶりに集まったと思いきや日向の話なんて」
「…」
「もう2年が経つぞ」
隆志先輩と雄大先輩が、相変わらずふざけあっている。
拓巳先輩は冷静にメロンソーダを飲みながら、歌本を眺めている。
「拓巳ー!俺のケツメイシ、聴きたいよな!?」
「いえ、別に。うるさいんで」
「お前もなんか歌えよー!メロンソーダばかり飲んでないで」
その光景に目をやる俺に、真琴先輩が隣で言葉を続けた。
「俺たちは俺たちなりに、日向のことをちゃんと思い出にして、忘れないで、それでも過去にすることで前を向いてきた」