あの白に届くまで
希望進路は柚先輩と同じ大学の、経済学部。
そこに進むために頑張っている。頑張ってはいる。
だけどそれは経済学を学びたいからじゃなくて、
俺には日向先輩や柚先輩のように心からやりたいと思える何かがないからだ。
迷うほどには、俺には道がない。
それでも今選んだ道を進むべきか…それで本当にいいのか悩む。
悩んでばっかりだ。
両親にも彩にも相談できることはできる。
…けど…
「…もう、待ちくたびれたんです。すぐ帰ってくる。また明日な。…そんな軽い調子で、先輩は手を振ったのに」
…引退試合の帰り道。
片手は柚先輩の手を取って、もう片方の手で日向先輩は手を振った。
"またな"
夕日が眩しくて目を細めたから、
その表情ははっきりとは見えなかった。
「…会いたいです」