あの白に届くまで
あんなに眩しいフィールドを。
あんなに輝く場所を見てきたのに、
妥協なんてできるわけがないんだ。
…わかっていた。
そんなの、痛い程わかっていたはずなのに。
「流される方が楽なんです。なんでもそう」
「…大地?」
「流れに逆らうより流される方が楽だって、自分に言い聞かせてました」
まぁ、いっか。
こんなもんだ。とか。
適当に進んでおけば、なんとかなるだろう。
あの大学の経済学部だったらそれなりのところには就職できるだろう。とか。
一番なりたくないタイプの大人を
一番やりたくないタイプの人生を
歩もうとしてた。
――本当は陸上が好きなのに。
切っても切れない関係なのに。
いつからそれで納得してたんだろう。
寒気がする。
「…本当は」
「うん」
「スポーツ科学部…っていう進路が、最近いいなと思ってるんです」