あの白に届くまで
予想はしていたけど、安っぽいドラマみたいな反応にため息が出た。
「K大の経済学部。そこに行きたいってずっと言ってたじゃないか」
「K大には行きたいよ。でも経済学部に行きたいとは言ってない」
「模試の結果でも分かるだろう。どっちにしろお前は今から死に物狂いで勉強しなきゃ、K大に受かる可能性は低いんだぞ」
…やれやれ。
兄貴にちらっと視線を遣ると、目が合う。
兄貴は小さく頷いた。
そして箸を止めると、「別にいいじゃん」と親父にフォローを入れてくれた。
「その結果受験に落ちようと、こいつの責任なんだからさ」
「浪人したらその予備校代を払うのは親だろうが」
きつい口調でそう睨んだ親父に、「浪人はしない」と口を挟んだ。
親父と兄貴、
そして母さんの視線が俺に向けられる。
一瞬静かになった隙をついて、俺はもう一度、まっすぐと言い放った。
「約束する。絶対に浪人はしない。迷惑は掛けないから」