あの白に届くまで
耳がキーンとする。
俺は顔をしかめると、若干受話器を耳から離して続けた。
「そ。…だから頼むね。ノートとかプリントとか、その他諸々」
「この大事な時期に2週間て…何するのよ?」
彩は少し呆れたような声だった。
まぁ、当然の反応といえる。
「自分探しの旅」
「…はぁ!?」
「彩、ごめん。…俺はやっぱりバカだからK大の経済学部には向いてないよ」
なんとなく、1つ吹っ切れた感じがして。
俺は電話を持ったままベッドの上に転がった。
彩にもしこの姿が見えていたら、絶対に怒られるだろう。
「だから、ごめんね?」
「そんなことないよ。大地はバカじゃないって」
「いや、バカだよ俺」
枕を片手で弄んで、
天井に向かって軽く投げつけた。
そして落ちてきた枕を華麗にキャッチする。
「陸上バカなんだよ」