あの白に届くまで
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窓際の花瓶には、赤い小さな花が綺麗に飾られていた。
清潔な白いカーテンが、風にふわりと揺れる。
窓から夕陽の光が差し込んで、その髪をオレンジ色に染める。
『陸上バカなんだよ。永遠に』
俺の初出場の大会は、
日向先輩にとっての最後の大会だった。
その一週間前に、俺は病室に立ち寄っていた。
何らかの小さな魔法を掛ければ
簡単に元通りになりそうな、
だけど以前とまったく同じように動くことはない、
そんな足を抱えて、それでも日向先輩は笑った。
俺は、上手く笑い返せなかった。
『ただのバカなら、勉強すれば治る。…でもな、スポーツとか音楽とか…もうそういうのに首ったけのバカは、永遠に治らないんだよな』
自嘲気味に先輩は笑った。
それは生まれつきだからだ、と言った。
『人は、生まれつき持ったものは、死ぬまで背負ってくんだ』