あの白に届くまで
喪失―my treasure is gone
――季節は秋になった。
枯れ葉舞い散る秋。
人恋しくなる秋。
塾帰りの道、彩と一緒に模試の話をしていた。
「大地なら、わざわざ受験しなくてもスポーツ推薦でいけたんじゃないの?」
「やだよ。俺は、実力で行きたいの」
「ふーん…」
風倉大地(かぜくら・だいち)、藤島学園高等部3年。
陸上部を引退してからは、受験漬けの毎日。
…でもないけど。
最近付き合い始めた彩とは、塾でほぼ毎日顔を合わせている。
成績は悪い方ではないけど、志望大学のレベルが高いせいで模試の結果は最悪だった。
頭のいい彩は簡単に「スポーツ推薦」を推してくるけど、
どうしても実力で行きたかった。