あの白に届くまで
日向先輩が失踪する、数日前。
つまりはあの最後の大会の直前。
病室に行った時、たまたま先輩が不在だった。
もちろん他の誰かの姿もなく。
――なんだ。それじゃ帰るしかないな。
そう思って、退室しかけた、
その時に
目についたもの。
揺れるカーテンの下にある、
小さな机に乗る花瓶。
赤い花が生けられている花瓶の横には何もなかったはずなのに
何やら書類が積み重なっていた。
窓が僅かに開けられていたから、かすかな風が隙間から部屋に入ってくる。
ペラペラの紙なんて、ふとした拍子に飛んで散らばってしまいそうだ。