あの白に届くまで



『おや、君は…日向君のお見舞い?』


向こうも、俺の顔を覚えていたらしく。

幸い俺が書類を盗み見て慌てていたことには気付いていないようで、笑顔を向けてくれた。



『病室のドアが少し開いていたから、気になってね。日向君は今、リハビリの最終確認をしているところだ。
…彼に会うかい?』


『あ……いえ。また今度来ることに、します』




ようやく心臓が落ち着いてきて
なんとか笑顔を作って言葉を紡いだ。



『そうか……、おや?』




頷いた担当医さんが、
不意にカーテンの方に目を遣ったから
どきっとした。



…マズい?
書類に気付かれた?

もしや医療関係の、大事な書類だったとか。




『あ、あの……』



見るつもりじゃなかったんですけど、窓を閉める時にちらっと見えただけで…!


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