あの白に届くまで
危うく先走った言い訳をするところだった。
担当医さんは、そっちの方には全く目もくれず、窓に歩み寄ってカーテンを開いた。
『今日は天気がいいな…』
ホッとする俺に、
その人は柔らかく笑いかけた。
お医者さんって厳しそうな、どちらかといえば堅いイメージがあったけど。
優しい雰囲気だった。
『空を見ると、気持ちが落ち着くな』
『そう…ですね』
『思わないかい?日向くんは雲に似ている』
言われて俺も、空を見上げた。
真っ青な空に浮かぶ、白い雲。
ゆっくりゆっくりと…それでも確実に流れていく。
『いつまでもここにいるように見えて、そうじゃない』
確かに。
その言葉に頷いた。
『届きそうで届かないんですよね』
そう呟くと、担当医さんは小さく笑った。