あの白に届くまで
呟くように言うと、柚ちゃんは黙ってコーヒーに口を付けた。
そしてしばらくしてから再びゆっくりと口を開く。
「…あたしにとっても、子どもみたいなものです」
「大地って子どもっぽいしな」
「いえ?」
彼女の悪戯っぽい目がオレに向けられた。
こんな表情もするんだ。
ちょっと新鮮で、ちょっと嬉しかった。
「藤島の陸上メンバー…みんなそうでした」
「え?みんな子ども?」
「はい。生意気かもしれないけど」
大地も
オレも
拓巳も
他のメンバーも、
それにもちろん、アイツだって…
「目が離せないから離さないはずなのに…いつの間にかさり気なく、何処かに行っちゃうんですよね」
柚ちゃんは頬杖をついてそう苦笑した。