あの白に届くまで


感動してる場合じゃないだろ、バカ。



こめかみを押さえた。
しかし残念ながら責める権利はないことはわかっている。
計画性がないところは俺も兄貴もそっくりだから。

こんなに英語に困るなんて思いもしなかった。


――こういう時、柚先輩がいたらな。




なんて、
急に柚先輩の顔が浮かんできた。



……やばい。
いきなり帰りたくなってきた。






「おい、大地」

「……は?」

「何してんだ。早く乗れ」



呼ばれて、はっと顔を上げると。

空港の出口に止まっているタクシーのうち一台を捕まえた兄貴が手を振っている。



ちょ、ちょっと待て!


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