あの白に届くまで



ホームに降り立って、右を見ると。

ちょうど同じタイミングで電車を降りた柚先輩が立っていた。



「久しぶりだね!」


ぱあっとした笑顔で、俺に笑いかけてくれる。
そんな先輩にぺこっとお辞儀をした。


「はい。お元気ですか?」

「元気だよ。大地くんは?」

「俺も…」



元気です。
先輩と同じ大学を目指して頑張っています。



そう続けようとしたのを、なんとなく呑み込んだ。

笑みだけを返した。



「先輩の家はこの近くですか?」

「うん…近いといえば近いんだけど」



彼女は少し、言葉を濁したようだった。

その瞳が一瞬だけ陰ったような気がした。



「特に何があるっていうわけじゃないんだけど、ぶらぶらしたくなって」


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