あの白に届くまで
パタパタと軽い足音。
徐々に近づいてきたその音は、すとんと俺たちの目の前に姿を現した。
「マミー!ウェア、イズマイドール?(ママ!わたしの人形は?)」
…天使かと思った。
一瞬目を疑うぐらいの、美少女。
歳は5、6歳だと思う。
栗色の髪の毛はふわふわとしていて触ったら柔らかそう。
真っ白な肌に大きな瞳。瞳の色だけは日本人の黒色だった。
「…大地、襲うなよ」
「バカ言うなよな」
「何この子。日本人?」
「いや、雄大先輩の叔母さんは旦那さんがアメリカ人だからここに住んでるって聞いたから…ハーフなんじゃない」
小声でひそひそ会話を交わす俺と兄貴を、その天使は大きな瞳で見つめてきた。
「フーアーユ?(誰?)」
「まったくこの子ったら。二階はゲストルームだから入っちゃだめだって言ってるのに。バタバタ走り回って」
おばさんは日本語でそう言うと、天使の頭を撫でた。