あの白に届くまで
…しかし、
「アタマワルソウネ」
ソニアがぼそっと発したこの言葉に、小さな苛立ちが芽生えた。
――うん。
訂正しよう。
天使じゃなくて、小悪魔でした。
「こらっ。…ごめんなさいね。この子ったら父親譲りで口が悪くて」
おばさんは慌てて俺たちに頭を下げたけど、そんなフォローは耳に入らない。
一方ソニアは「ソーリー。ジョークよ」と6歳児とは思えない大人な笑みを浮かべた。
…うん。
――絶対にうまくやっていけねぇ。
アタマワルソウネ。
6歳の女の子に図星を指された時の反応なんて、大学入試には出ないから学んでいない。
おばさんに何やら英語で怒られながら連行されて、ソニアは子供部屋に戻っていった。
その姿をひきつり笑いながら見送っていた俺に、兄貴が囁くように言う。
「…あのガキ、ミシシッピ川に沈めた方がいんじゃないの」