あの白に届くまで
そう言ってソニアを家の中に入れた後、俺はもう一度夜空を振り仰いだ。
秋から少しずつ冬に変わっていくような、冷たい夜空。
日向先輩はもしかしたら…
そんな人はどこにもいないんじゃないかと、不安な気持ちになる。
――始めから、いなかったんじゃないかと。
「大地」
名前を呼ばれて思わず肩が跳ねる。
振り向くと、兄貴がベランダと部屋の境界線に立っていた。
「お前も早く中に入れ。おばさんがコーヒー淹れてくれた」
「あ……うん」
頷いてフェンスから手を離す。
兄貴の目が少しだけ細くなった。
暗いから、表情はよく読み取れない。
「わかりやすく落ち込んでんね」