あの白に届くまで
「欲しい?」
「…いらない」
そう短く答えると、兄貴はにっと笑って「ほら」とキャンディを差し出した。
黄色い包み紙だからレモンかパイナップルといったところだろう。
「ありがと」
口に放り込む。
予想通り、何やら酸っぱい味がした。
「その"日向先輩"って、なんでいなくなったんだ?」
俺と入れ替わりにフェンスにもたれかかった兄貴にそう聞かれて、思わず苦笑した。
…それが分かれば苦労しないんだよ。はじめっから。
「知らない」
「ふーん」
「何もかもが嫌になったんじゃないのかな」
「現実逃避ってやつ?」