あの白に届くまで
『柚は?いる?』
『あたしもいらない』
部室の一番奥にある椅子に腰掛けて記録ノートをつけながら、柚先輩も手を振った。
この時点でも俺は気付かなかった。
『………!!』
飴を噛んだ瞬間、口に広がったとんでもない刺激。
異常な酸っぱさに顔が真っ赤になるまで。
『な…なん……これ…っ』
『やっぱり、大地はいいな!』
爆笑する日向先輩を涙目で睨んだけれど、何故か憎めなかった。
日向先輩の陰謀にとっくに気がついていた拓巳先輩と柚先輩も笑っている。
…すると俺も、自然に笑えてしまうんだ。
「う……」
ベランダでうずくまったまま、俺は込み上げてくる涙を拭った。
――…なんでこんなにも、懐かしいんだ。