空色デイズ


「加藤、その手、どうすんの?」
「んー……」


加藤の手は両方ともインクまみれで(そりゃあ、まぁ、当たり前なのだろうけど。だからこそ私は、まさかラインマーカーまでは壊さないだろうとの計算の上で、加藤にラインマーカーを投げつけたのだが、奴は私のその計算をいとも容易く打ち崩したのだ)、四つになった(元)ラインマーカーを握りしめていた。


正直、崎山には悪いがそのラインマーカーはもういらない。


「ちょ、加藤っ!」


思わず叫ぶ。


加藤は、そんな自分の手を数秒見つめ、何を思ったか四つになった(元)ラインマーカーを、あろうことか斜め前の席に座る(元)持ち主、崎山に投げつけたのだった。


「うわっ!な、なんだよ!」


白いワイシャツにインクが滲んでいく。

驚いて振り返った崎山の、とんでもなく情けない声に噴き出しそうになってしまったというのは秘密だ。
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