君に届ける最後の手紙
そしてとうとう試合の日がやってきた。


グラウンドに着き、各々が練習を始めると、相手側のベンチ近くから小気味良くも、重い音が聞こえて来る。


「バシーン!………バシーン!………」


「はえぇ〜……」


部内から不安げな声がこぼれる。実は向こう側のピッチャーと、俺とゲンキは、小学校の時同じチームでプレーしていた。


やはり当時から県内でも指折りの実力者ではあったが、当然格段に腕を上げた様だ。


「由、打てるか?」


「ん〜……どうだか。ありゃ140近く出せるぞ。バットに当てるので精一杯だな」


そんな不安に駆られているうちにアップも終わり、うちの先攻で試合は始まった。


俺の予想通り、先頭打者はバットに当てる事すら出来ずに三振。二番は初球を打ち上げ凡退。


やる気を失う様な内容で打順が俺に回って来た。


打席に立った俺は、相手に軽く笑みを飛ばすと、相手も久しぶりと言わんばかりに、帽子のツバに手を触れた。


注目の初級は、手元で伸びてくる様なストレート。ど真ん中だ。


「はえーはえー。ご挨拶だな……」


二球目は、ストレートと同じ様なスピードで飛んでくるフォークだ。さすがにこれには手が出てしまう。


たった二球で追い込まれた。


「ちくしょう……。次は外して来るか?」


そうでもないらしい。ボールが相手の左手を離れる瞬間、人差し指が引っ掛かるのをわずかに確認出来た。


外角からストライクに入って来るタイプのカーブだ。


「……しめた!」


と思ったが、前の二球とは速度に差があり、タイミングが狂っている。


俺は泳いだバットの先に引っ掛け、サード方向に球が転がらせてしまった。どうせアウトになるならと思い、頭から滑り込む。


ズザァ〜ッ!!!……


頭を上げ、状況を確認すると、どうやらファーストには送球されていないようだ。


サードのライン際、切れるか切れないかの所で球が止まってくれたらしい。……ラッキーだ。


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