君に届ける最後の手紙
「ひとまず逃げよう!」


そう言うと俺は彼女の手を握り、一本道を引き返した。


しかし、


「おい!待て!」


鎌親父は後から猛スピードで追い掛けて来た。


俺一人なら楽に逃げ切れるところだが、傍らには足の遅い女子がいる。


みるみるうちに鎌親父との距離が縮まって行く。


そして……


「由君……ハァハァ……もうダメ……走れない……ハァハァ……」


彼女がアサミなら放っとくかもしれない。


が、彼女は訛っている。純朴なのだ。


俺は覚悟を決め、鎌親父の前に敢然と立ちはだかった。


「ア、アンタ何者なんだよ!」


「何者って……お前ら学校さ戻るんだべ?ここいらにはカマオヤズ出っからよ、車で送って行ぐがど思ったのよ」


すると先程まで怯えきっていた彼女が、俺の言いたい事を代弁する。


「何言ってっだ!カマオヤズはおめぇだべこのっ!」


「俺がカマオヤズ?何でよ?」


「手さ持ってっぺ?!」


「手?……カマ……鎌……あぁ、鎌でねくてカマだ!」


と言うと、鎌親父だと思っていた人物は左手の甲を右の頬に当てた。


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