君に届ける最後の手紙
次は四番、ゲンキの打順だ。


｢ふうぅぅ……｣


ゲンキは一つ、大きな深呼吸をすると、キッと相手を睨み付けた。


普段はふざけた様な奴だが、打席に立つとまるで別人だ。


ゲンキは初球、二球目を敢えて見逃し、三球目が来ると、それを思い切り引き付け、渾身の力で振り抜いた。


するとライナー性の打球がライト方向へと飛んで行く。


あわやホームランという当たりだったが、フェンス手前でダイビングキャッチ。


ライトのファインプレーにより阻まれてしまった。


伊達に県内の強豪校は名乗っちゃいないらしい。守備も抜群だ。


ゲンキはバットを地面にたたき付け、身体全体で悔しさを表した。


次は相手の攻撃。


うちのピッチャーは決して豪腕タイプではないが、バッターの手元で狂わせ凡打を誘う。俗に言う、打たせて取るピッチャーだ。


一人目はファーストへのゴロ、二人目はキャッチャーフライと、ここまでは順調に来ていたのだが三人目。ピッチャーは手元が狂ったのか、甘いコースへと放ってしまった。


｢カキーン！｣


勢いのある打球は、俺とゲンキの間を抜けて言った。


｢ヤバイ！｣


俺は球を取り、ランナーを確認するとすでに二塁に向かっていた。しかし、打球に勢いがあった事も手伝ってか、ギリギリ間に合いそうな所。


俺は自分の肩を信じてセカンドに全力で投げた。


｢どうだ？間に合うか？！｣


すると何とか間に合い、ランナーをアウトにする事が出来た。


さすがにホッとした俺とゲンキは、グラウンド上でグラブを合わせた。


｢頼りになるよ｣


珍しくゲンキの口からは皮肉っぽさが消えている。


< 11 / 233 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop