君に届ける最後の手紙
良かった……今でも根に持ってたらどうしようかと思った。


「……ん?」


何かおかしい。


いや、おかしいという表現は間違いか。


昨日まで感じていた、気まずいというか、息が詰まる感じは二人の間から消えている。


昨日大村は言っていた


「まず自分を知ってもらえ」


アイツに礼を言わなきゃな。


こんなに簡単な事だったのか……


こんな事で悩んでたのか……


そう思うと、なんか笑えてくる。


「ププッ!……ハハハ!!!」


「ん?どうしたの?」


「いや、俺今までちゃんと付き合った事なくてさ。どうすればいいか悩んでた。それが今考えるとおかしくてさ!……ププッ!」


「由もっ?!ハハッ!実は私も、ずっと緊張しきりだったよ!」


アイも同じだった。そう思うと余計に笑いが出る。


「そうか!ハハハ!」


「ハハハハハ!!!」
「アハハハハ!!!」


二人は完全に打ち解けた。


そうなれば、今までの事が嘘の様に、


「アイの左手を握りたい」


俺の右手は素直に訴える。


あと20㎝……


あと10㎝……


あと5㎝……


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