君に届ける最後の手紙
その後は俺とゲンキがヒットを一本ずつ打つも得点には繋がらず、両チームのスコアボードには0が続いた。


そして最終回、うちの攻撃。


ワンアウト、ランナー無しの場面で俺に打順が回って来た。


俺は軽くバットの先を相手ピッチャーに向けた。


当然あるはずもない自信、ハッタリだ。


疲れによる苛立ちもあるのだろう。その挑発に触発されたのか、相手はど真ん中に全力のストレートを投げ込んで来た。


「来たッ!!!」


俺はそれを全力で振り抜く。


すると打球は左中間を深く破って行った。俺はそれをツーベースとし、次のゲンキに託した。


ようやく巡って来た絶好のチャンスに楽しさを感じたのか、顔には小さく笑みを浮かべていた。


そして初球、ゲンキは甘く入ったカーブをバットの真芯で捉えた。打球はセンターの頭上を越えるツーベースヒット。


俺は待ちに待ったホームベースを踏む事が出来た。


その打球で相手ピッチャーは目が覚めたのか、後続はなく、スリーアウトとされてしまったが、何はともあれ先制点を取る事が出来た。


さぁ最終回、相手の攻撃。


向こうも最後の攻撃という事で、必死にやってくるだろう。


すると、やはり思った通りの猛攻を受け、ツーアウトながら一、三累にランナーを背負ってしまった。


だがバッターは八番。カウントもツーナッシング。最後のボールは外角低めに投げ込んだフォークだった。


「カキィーン!」


球場に嫌な音が響く。


ボールはゲンキの前でバウンド。サードランナーはすでにホームへと向かっていた。


が、打球に勢いがあった為、彼の肩なら何とか間に合いそうなところ。


ゲンキがボールに向かって走り込み、それを取ろうとした瞬間、場内は騒然とした。


……ボールを後ろにスルーしてしまったのだ。


痛恨のエラー。


その間に相手ランナーが二人生還。


……ゲームセット………。


ゲンキは相当ショックだったのだろう。自分のグラブを見つめ、ただただ涙をこぼしていた。


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