君に届ける最後の手紙
しばらく歩き、いざ自宅の目の前に立つと、アイも緊張の色を隠せないらしい。


「スゥ……ハァ……」


呼吸を整えている。


そこまでしなくてもいいんじゃないかと思うが、実際は俺のせい。


俺って意地悪なんだろうか。


が、よく考えてみて欲しい。そんなにカツカツした母親なら、俺はこんな奴に育っちゃいない。


「よし……由、行こ!」


「お……おぅ……」


なんか俺まで緊張してきた。


自分の家なのに……。


ガチャッ……


「ただいまぁ!」


「お帰り!由ちゃ……?」


「なんだ、アサミ居たんだ……ん?」


………………………………………なんだ?……空気が重い。


と言うか、空気が薄い。アンデス地方か……と言うくらい。


広い広い草原の中で、リャマとアルパカが睨み合っている。


リャマが俺に目で語りかけた。


「この人誰?」


その質問で、俺はこの重い空気の正体を悟った。


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