君に届ける最後の手紙
彼に追い付いてからは、しばらく無言の時間が続く。


まぁ、随分長い付き合いだ。彼のダンマリにも慣れている。


10分もくっついて歩くと、向こうから口を開いた。


「なんで着いてくんだよ……」


「一つだけ言いたくてさ」


「お前も責めるのか?」


そんな事はないと解っているはず。ホントに素直じゃない。


「正直、誰のせいで負けたかなんてわかんねー。打たれたピッチャーのせいでもあれば、もっと点を取れなかった全員のせいでもある。つーかそんな事はどーでもいいんだ。ただ、俺はお前のお陰でホームベースを踏めた。ありがとな」


俺がそう言うと、ゲンキは言葉を詰まらせ、照れながら言った。


「……何だよ……やめろよ。お前にそんな事言われると気持ちわりぃ」


「なぁゲンキ、キャッチボールしないか?」


「……おう……」


俺達は近くの公園でバッグを下ろし、キャッチボールを始めた。




「なぁ由、知ってたか?」


「何を?」


「お前、俺と初めて知り合ったの小一の時だと思ってたろ?」


「あぁ……違うのか?」


「四歳ぐらいの時、よく遊んでたんだぞ。そん時俺保育園も行けなかったからよ、お前が初めて出来た友達だったんだ」


「お前ガキの頃から性格悪かったからな。だから友達できなかったんだろ」


「テメェは……」


「……じゃあゲンキ、俺も言う」


「なんだ?」


「俺は今すげぇ淋しい。小学校入って、一緒に野球始めようっつって、十年近くも同じチームでやって来たお前ともう野球ができねー。マジ辛い」


「…………」


本当に淋しかった。彼もそう思ったのだろう。その後は二人とも口を開く事はなかった。


変な空気のまま、陽はゆっくりと沈んで行く。


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