君に届ける最後の手紙
それが合図となり、俺は松明を手に取ると、そのままその火を感慨深気に縄へ移した。


灯油を軽く吸った縄の上を、青みがかった赤い炎が滑るように燃え移って行く。


それから30秒もかからなかった。滞りなく全体に火が回ると、夜の闇に"ぽぅ"と文字の花が咲く。


寮祭 1999 夏


それを皆、思い思いに見上げる。


ただ呆然と見上げる者。


笑顔で見上げる者。


中には涙を浮かべる者までいる。


それはそうだろう。人によってこの寮生活は、辛く苦しい物にもなったはずだ。


何はともあれ、寮祭は大成功だったようだ。


俺とアイは互いに顔を見合わせると、安堵にも似た喜びの表情を浮かべる。


……本当に良かった。


こうして寮祭と共に、俺の寮生活は幕を閉じた。



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