君に届ける最後の手紙
――しかし……


「ダメだな、俺」


アイが家を出て30分が経とうとしているが、番号を押したまま通話ボタンだけ押せずにいる。


一年も付き合ったアイと別れてまで、友達のアサミを選んだのに、これでは。


「何迷ってんだろ……」


解らない。


アイの気持ちを考えろ。


アイはどんな想いをして身を引いたか。


そんな事を考えても指は通話ボタンに触れようとしない。


「ん〜……」


違う。アイの事を考えてやる事ももちろんだが、違う。


今一番考えてやりたいのはアイの事じゃない。アサミの事だ。


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