君に届ける最後の手紙
「そーいや俺、来て良かったのか?」


アサミには彼氏がいたんだ。


そんな事は承知の上で、むしろその事を話す為にここへ来た。


が、いざ家の前に来てみると、突然気弱な俺が顔を出す。


もし、このまま俺が家に行って、彼氏がいたら……


それが原因で、別れる事になってしまったら……


いや、あんな最低な男、別れていいんだ。別れさせなきゃいけないんだ。


「よっしゃ……!」


俺は気合いを入れ直し、来た道を引き返した。


「……ん。もう遅いしね」


ここまで来た。それだけで充分じゃないか。


俺は自分で自分を褒め、ゆっくりと帰路に着いた。


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